猫、窮鼠の罠に掛かる。参


暗い、月の光すら容易には届かないほど、タバの裏通りは入り組んでいる。
街道の喧噪を頼りに、南の町を駆け抜ける。

影からの報告はない。
明かりのない細い路地、しかも家が密集しているため、屋根が重なっている場所もある。
いくらダリスでも見つけだすのは困難かもしれない。

あれからどれだけ経っただろうか。
恐ろしく長い時間走っている気がする。
ガウシェンの姿を見失って、町の中心を横断する街道より南を走り回っているが、傭兵らしき人間は見あたらない。
というより、全くと言っていいほど人に出会わない。

「アシュヴァールっ!前侯爵!!」

声を張り上げてみるが応答はなかった。
全て北の喧噪に掻き消されてしまう。
それでも、現在位置が分からない時、街道から聞こえる騒音はいい指針になる。

「アシュヴァール殿!どこにいるんだっ!!!」

アシュヴァール・シュルト。
この反乱の首謀者、リルバスの実父で前ザイン侯爵。
俺が名を呼ぶ人物に対して、事実として知っているのはこれだけだ。
会ったことも、アルグバードに来るまで名前を聞いたこともなかった。
けれど、そもそもこの場所に来る発端を作った人間だ。

「いないのかっ!?返事をしてくれ!」

ここはどの辺りなのか。
一度、宿に戻った方がいいのか、前侯爵が口にした宿は十中八九あそこだ。
そう思いながら、探さずにはいられない。
宿に居ると考えるのは、気休めにすぎないと分かっているから。


その時、キラリ、と何かが目に映った。
眩しくて、思わず片目をつむる。

首を巡らせるが、光った方向には何もない。
先の見えない闇の路地が続いているだけだ。
けれど、光が目に入った場所に立つと、やはり鏡か何かに反射した光だろうか、目に飛び込んでくる。

鏡、ガラス、金属、……剣か!

そう思った途端、体は勢いよく動きだしていた。
金属片でも何でも良い。
暗い中、地面に目を凝らし必死で光の元を探す。
ゆっくり、慎重に、月の光の届かない路地に足を進める。

カツン、と足先に何かが当たった。
当たったのは左足、急いで膝を突き物体を確認すると、やはり剣だった。
剣先から根本の方へ確認していくと、建物の隙間から出ていた。

「……っ!!」

出そうになった声を、辛うじて押さえつける。
剣柄を握る腕があった。
ぼんやりとしていて判然としないが、柄を握りしめているのは白髪の男だ。
ぐったりとした様子で石畳に倒れ動かない老人は、それでもかなりの力で短剣を握り、放していない。

周囲の気配を探りながら、老人を路とも呼べない狭い民家の隙間から引きずり出す。
上背がある事に反して、老人は酷く軽かった。
その軽さが、逆に恐ろしい。
顔を近づけてみるとわかる。老人の頬は痩け、目の下は異様なほど落ちくぼんでいた。
少し触っただけで、髪の毛が数本ぱらぱらと地面に落ちてゆく。

2度だけだが、俺は同じ目に陥った人間を見たことがある。
年だからではなく、心労により窶れているのだ。
その経験から見ても、これはかなり危険な状態だった。

俺は老人を担ぎ、できるだけ揺らさないように宿へと走る。
大丈夫だ、息はしている。

体がかなり冷えていた。
今夜はさほど気温は低くない、何時間前からあそこにいたのか。

「ダリス!」

影の名を呼ぶ。
痩せてはいても大の大人だ、一人だけでは運ぶのに時間がかかる。
今は一刻も惜しい。
この人に、前侯爵に、ここで倒れられてはいけない。
終わる争いが収拾がつかなくなってしまう。

「ダリス!どこにいるっ!」

叫びながら、東門近くの宿まで走る。走っているというより、早歩きの域だ。

「ダリッ――」

「グレイ!!!」

気配を感じ、咄嗟に脇道に体を隠した瞬間。怒鳴り声に名を呼ばれた。
声に反応して、瞬時に振り返ると、暗がりの中にきらりと朱色の筋が見えた。

「ガウシェンかっ!?」

「グレイ!」

思わず声を上げると、それに答えるように再び名を呼び、朱色の髪の男、ガウシェンが走ってきた。
そして俺の目の前まで来、背中の人物を見た途端、これでもかというほど目を見開く。

「なっ!……アシュヴァール侯爵、」

「やはり、そうか」

ガウシェンの言葉で確信した。

銀のような白い髪に豊富な髭、年に似合わずしっかりと伸びた背筋。
四角い顔の中の目は一重で細く、けれど穏やかな光を称えていたらしい。
今は見る影もない。
それでも衣服や手、雰囲気から貴族であることは察しが付いた。

ガウシェンの眉間の皺がどんどん深くなっていく。
ギシリッと歯を鳴らし、拳を固く握り目をつむるガウシェンに、俺は思わず半歩下がる。
押さえきれていない殺気が漏れ出ている。

全身を刳るような気配に前侯爵を支える腕が強くなる。――――と、その時。

「う、ぐっ」

「え、」

「侯爵っ!!」

僅かな呻きとともに、前侯爵が意識を取り戻した。
慌てて負担の掛からぬように背に手を回し、体を支える。
ガウシェンもぼろぼろの服に手を置き、腰に手を回す。

表情が見る見る険しくなる。

「どうした?」

「血が出てるっ、侯爵!宿へ運ぶので、大人しくしててください!」

ガウシェンの声に反応して、前侯爵が辛うじて開いている目をこちらに向ける。
間近で見る顔は大粒の汗が光り、顎やこめかみには砂泥がついている。
と、凝視する俺を目に映したザイン前侯爵は、苦しげな顔を強張らせ目を見開き、固まった。

「っあ……!!」

「侯爵!?」

ぐらりと傾いた背を、ガウシェンが驚き支える。
その瞬間、痛いほど握り締められた肩と手に俺が気を取られた時、侯爵が喘ぎながら呟く声が脳に響いた。

「あア、レク様、……アレックス、様っ」


その時浮かんだのは、なぜか今にも泣き出しそうな彼女の顔だった。

今はその様な時ではない、考えるべき事は他に山ほどあるはずなのに。
さーっと色を失う彼女の頬と、開ききった瞳。
彼女自身が全くその事に気づいていないことで、余計に俺の中の印象は強くなった。

「アレックス様っ申し訳ございません!私めの不始末で、この様な事を引き起こっし、……っ」

「侯爵!喋るなっ!」

彼は、この人は俺をアレックスだと思っているのか。

いや違う。
発熱で意識が混濁している、譫言と同じだ。
誰かに安心させてもらいたいのか。

「喋らないでくれっ、傷に障る」

「申し訳っごほ!愚息の、暴挙を止めっ、る位置にいながら、っ私は――」

駄目だ、聞こえていない。
肩を掴む力はますます強くなっている、どこにこれほどの力が残っているのか。

「どうか、どうか。陛下っへ!ス、レイルに、民、……寛大な処置、をと」

ぽとり、と地面についた俺の膝に滴が落ちる。
痩けた頬を流れ落ちる涙は止まらない、俺の手首を握る角張った手は小刻みに震えていた。
まずいな、どうにかして落ち着けなければ。

「大丈夫だ。スレイルはザインの民を処断したりはしないっ」

「どう、か。寛大なお心で、皇ていへ、アレク様。乱をっ、……私めの、不始末で」

「分かった!俺が約束する、民へ手出しはさせない!」

言葉を出し続ける前侯爵の手を取り、目を覗き込むように大声で言う。
ガウシェンが俺を見るが無視し、「安心しろ」「大丈夫だから」と繰り返した。

「アレ、くさま……どう、か。ザインをお、守りくださ――」

言葉が届いたのか、前侯爵がほっと息をつき、肩を握る腕が急激に弱まった。
そのまま、見開いていた目をゆっくりと閉じる。

「侯爵!しっかりしてくれっ!!」

ガウシェンが揺するが、苦しそうに眉を寄せ、譫言のように嘆願する以外に反応はなかった。
完全に意識を失ったらしい。
ここで留まっているわけにはいかない。
前侯爵を支えるよう言おうとした時、ふとガウシェンの背後にある民家の影が揺らいだ。

「ガウシェン」

「……ああ、分かってる」

それだけ言うと、ガウシェンは落ちそうになっている前侯爵の剣を持ち、背中を支える。

「急ぐぞ、思ったより出血が激しい」

その一言で、さらに状況が険しくなる。
とりあえずも、落ち着いたところでの治療が先決だ。

「ダリス!いるかっ!?」

こつん、と屋根で音がした。
宿へ促すガウシェンに無言で頷くと、後ろに神経を尖らせながらも東へ走った。



 **********



燭台の火が揺れている。
それが、寝台に横たわり青白い顔で眠り続ける前侯爵を表しているようで。
悲観的に考える俺自身、かなり余裕がない。
窓枠を握りしめ、頭を振る。

気持ちを、切り替えなければ。


前侯爵が倒れていた。
裏路地の、しかも狭苦しい民家の隙間に隠れるようにして。

腹部には2カ所ほど刺し傷があり、そのうち脇腹の傷が深く出血も激しい。
他に目立つ傷はなかったが、疲労が激しく随分と窶れている。

異常だった。
というより、こんな事は想定外だ。


ザイン侯爵の反乱が知らされた当初、スレイル側が首謀者と考えたのは、実は前侯爵の方だった。
紙に書かれた事実だけを調べた結果、そうなったのだ。
50年間。
彼はアルグバード最大の州ザインのほとんどを権力下におき、侯爵という爵位を戴くシュルト家、 その当主であり続けた。
昨年ようやく息子に家督を譲り、妻とともに隠居するも、アミュンからさほど離れることはなかった。
40歳を優に超える息子がいながら、60の後半になっても現役を退かなかった前侯爵に、 スレイルが下した判断がそれだ。

もっと探っていれば、とは思わない。
所詮、書類だけで事実を推し量ることは不可能だ。
ガウシェンや彼女に指摘されたことは、本当に耳が痛い。


部屋にある燭台は今は3つ、前侯爵は窓側の寝台に寝かせた。
扉側の寝台にガウシェンが目を瞑って座り、さきほどからぴくりとも動かない。

この男は知っていたのだろう、前ザイン侯爵であるアシュヴァールという人物について。
乱など起こす人ではない、と。

「ガウシェン、」

ガウシェンは俯いたまま答えない。
だが、さきほどまでの全てを拒絶する雰囲気は払拭されている。

「よく俺の居場所が分かったな」

「……てめぇの付き人に誘導されたんでな」

ダリスか。
俺がアシュヴァールを見つけたのを知り、ガウシェンに知らせたのか。

「傭兵っぽい野郎が、路のど真ん中に倒れてやがって。 奥の方に血が点々と続いてるから辿ってたら、いきなり上からナイフ落としてきやがった」

「……」

そう言えばダリスは生粋の軍人だった、いまさらだったからすっかり忘れていた。

そうか、あいつはガウシェンが気に入らないのか。
まあ分からないではないが。

外で、カチッ、と微かな音がした。
一瞬目を瞑る。
まだ数は少ない、剣柄を鳴らすようなやつは相手にもならない。

「まぁ、それは置いといてだ。いいのかよ、あんな約束して」

目を半眼にして、俺を見るガウシェンの表情は渋い。
理由が分かっているだけに、何とも言えない。

それでも。
紛れもない本心でもあった。
無理に言わされた形であることをこの男が気にしているのなら、俺はずいぶん気に入られているのだろう。

「俺自身、考えていたことだ」

俺の言葉に、ガウシェンはがしっと髪を掻き回す。

「だからってなぁ。んな簡単に、約束なんてするなよ。言質を取られることになるぞ」

「お前にか?安心しろ、口約束だろうが、一度した誓った事は必ず守る」

「……はぁ」

じとっ、と俺を睨んだ後、ガウシェンは大仰に溜め息をついた。
その様子に自然と眉が寄る。
なんだその溜め息はっ、人の顔を見て嘆息するなど失礼な。

「さて、と。そろそろ、集まってきたか」

「!」

ガウシェンの声に再び、背後の気配を探ると、確かに前より人数は増えている。
少し声も聞こえる。
乗り込むかどうか、上の指示を仰いでいるのか。
自然に口角が上がる。

前を見ると、ガウシェンも不遜なほど余裕の笑みを浮かべていた。

「グレイ、中ボスは喋れる状態にしておけよ」

「分かっている」

前侯爵はまだ深々と寝台に横たわったまま、ぴくりとも動かない。
その時、扉をノックする音が聞こえ、次いで宿の主人が音もなく入ってきた。

「いいかね」

「ああ、ちょうど良かったぜ」

にやり、とガウシェンが人の悪い笑みを浮かべ俺を見る。
口調とは裏腹の真剣な目に、了解、と頷く。

「んじゃ、行くか!」

その声と同時に、俺は勢いよく窓を開け人気のない街道に躍り出た。

 *

男達は目を丸くし、茫然と頭上から降り立った俺を見る。
構える気配もなく立ちつくす集団に、俺は剣で横薙にした。
続けて2撃目を放ったところで、初めに胴を斬った時に吹き出した男の血が頬にかかる。

膝から頽れる男は、操り糸を切られた人形のようだ。
地べたに伏した男を横へ蹴り飛ばす。
ようやく我に返ってきたらしい群れへ、反撃の隙なく斬りかかった。

「おらぁ!!足が止まってんぞっ!自殺願望でもあんのかってめぇら!!!」

後ろで聞こえたかと思うと、最後の声は真横から入ってきた。
ガウシェンは、俺が斬り払いぐらついた男ごと、後ろの傭兵を貫いた。

「がぁああっ……ぁ」

「うぐっ!!」

濁った悲鳴が聞こえる。
じんわりと男の胸から滲む血は、ガウシェンが長剣を引き抜くと同時に、どばりっと吹き出した。
絶妙の身のこなしで返り血を最小限に押さえたガウシェンは、俺に一瞥をくれると、 すぐさま束になった傭兵どものところへゆく。

「ダリス!!」

倒れた男の後ろにいた、傷の浅い方の男に向かって右足に剣を突き刺し、俺は影を呼んだ。
今度は音をさせず、俺の背後に影は降り立った。
その時、微かだが東門の方から蹄の音が聞こえた。

来たのか!

「宿に誰も入れるな!前侯爵を死守しろっ」

「はいっ!!」

応えると同時に、ダリスが再び屋根に飛び乗るのを感じた。
俺は、向かってくる傭兵と斬り結ぶ。
稀に見る大男だ。
体格差を活かし力業で強引に剣を振り下ろしてくる。

「っ、死ねぇえええ!!!」

「断る!」

剣を水平にし突っ込んできた男の攻撃を避ける。
僅かに左袖と肉が引き裂かれる音がしたが気にせず飛び上がり、背後から思いきり垂直に剣を突き下ろした。

おぞましい呻きが夜を裂く。

鎧で覆われていない首周りに刃を刺し込む。
身長差があるため、柄を握り肉に刺さったままの剣を水平に戻しながら、地面に足をつける。
体内にある刃物で肉を圧迫され、傭兵は悲痛な叫びをあげる。
一気に剣を引き抜き、そのまま次の敵へいく。
大男はピクピクと何度か痙攣していたが、二度と立ち上がらなかった。

ふ、と気配を感じ、瞬時に振り向く。
俺に、太刀が迫る。

「覚悟ぉぉおおお!!!」

紅い飛沫が喉に、鼻筋にかかる。
刃を伝い、男の血が徐々に手を染めていく。
傭兵の纏う鎧ごと肉を貫いた音と、男の内側から血が染みだす音が聞こえた。

「ぐ、あぁっ……ぅっ」

その呻きより先を聞く前に、俺は勢いよく剣を引き抜く。
どっ、と男が伏した。
鎧越しの男の背中、何より胸から血がとろとろと湧き出ている。
ちらり、とそれを見、得物を探し彷徨う男の手の甲に刃を突き立てた。
再び聞こえた呻きが弱くなると、男が持っていた刀の位置を確認する。

そして剣に付着した適当に血を払うと、街道の中心へ走った。


血が飛ぶ。
頬に額に付き流れる感触が気持ち悪い。
ちらりと見たガウシェンは、俺より余程凄まじいことになっていた。

血の雨でも浴びたかのような姿に畏怖を覚え、同時に納得した。
なぜ、スレイル軍がダムスキールであれほどの苦戦を強いられたのか。少なくとも、 理由の半分以上はこの男なのだろう。
この男と共にいると、たとえどれほど絶望的な状況でも、なんとかなるという心地よい錯覚に陥る。 そして、錯覚をそのままで終わらせない実力を、こいつは持っている。

決して敵には回したくない男だな。
心底そう思う。
二度と敵になどならない、と。心のどこかで胸を張る声を聞いた気がした。


蹄の音がすぐ近くまで迫ってきている。

「ぁああ!!」

「す、スレイル軍だぁ!」

街道の端から叫ぶ声が聞こえた。
同時に、俺の背後に音もなく近づく男がいる。
今現在、タバにいるはずの影の、もう一人だ。

「ただ今戻りました。一連隊、タバの東に到着し包囲を始めております」

「そうか、ご苦労だったな。ついでにここに転がっている奴らで息のある者を全て隊へ運んでくれ」

「御意のままに」

背後から気配が消える。

と、その時、ふと視線を感じ、辺りを見回す。
傭兵達は突如馬に乗り現れたスレイル軍に圧倒され、散り散りに逃げまどっている。
その後ろを、ガウシェンや連隊内の遊撃を得意とする連中が追い、潰していっていた。
誰も彼も、他人を見る余裕などないはず……っ!

「っ、待て!!」

居た。

騒然とした東門近くの街道で、ただ一人、そこだけ切り取られたように静かな場所に佇む男が。
俺と目があった瞬間、男は反対側へ、西の方へ走り出した。
逃がしてたまるか!あの男が指示役だっ!

「ガウシェン!!」

俺の怒鳴り声に、ガウシェンが振り向く。
そして俺の目線を追い、叫んだ。

「止まれぇ!!アーベルト!」

ガウシェンの怒号にスレイル軍も思わずつかの間動きを止め、やつが名を呼んだ男を見る。
俺も男の背を追うが、逃げまどう傭兵が邪魔で思うように前へ進めない。
剣や柄で殴り突き飛ばし、強引に足を動かす。
その間にも、男は予め用意してあったのだろう、馬に跨り一気に逃亡速度を上げた。

「蒼!!あの男を止めろっ!」

声を張り上げる。
俺の命に呼応し、倒れた男共をふん縛っていた蒼が一挙に前へ出る。
ガウシェンを追い越し、人間離れした跳躍でアーベルトと呼ばれた男の真後ろにつき、 短剣を握った手で馬の足を斬りつけようとした。

その時、あり得ないことが起きた。


「なっ!!」

「…っ!!!」

俺は言葉が出ない。

馬の足を止めようと、蒼が剣を馬の足に振りかざした時、男がちらりと振り返った。
途端、紫の光のようなものが馬の周りを包んだかと思うと、蒼を弾き、建物に激突させた。


そして、馬も男も、忽然と姿を消した。







inserted by FC2 system